1.
メドレー「心の切り絵」
今まで村上保さんの切り絵と組んで作った曲のメドレーを作ってみませんかという提案はどちらともなく出たんです。
二十周年記念としてはおもしろいですよね、と簡単に考えたら大変でした。どう繋いでいいのかで、編曲の水谷さんと苦労しました。
最終的には村下さんの意見でこうなりました。初恋のコーラスは七月三日の渋谷公会堂のお別れの集いで収録させてもらいました。
2.
ロマンスカー
告別式でも、この曲が何度も流れましたが、実は村下さんが一番好きだった曲なんです。
東京の小田急線を走るロマンスカーがなくなるという日に彼は倒れました。奇妙な縁でした。
「名もない星」に収録。九十二年にシングルとしても発表しました。
3.
だっこちゃん(新曲)
新しく書き下ろした曲から全体のバランスを考えて選曲したのが三曲ありました。新曲の中で最初に歌入れをした曲です。
数々の名曲のコーラスワークを手伝ってくれた町支寛二くんが、村下さんが亡くなってからやってくれました。
タイトルを決めたときに、僕たちはそのことで何時間も昔話をしました。
4.
南十字星(新曲)
久しぶりに明るい曲をやりましょう、それも大人の女の人の歌で、ということで作った曲です。
彼はオーストラリアが好きでした。このアルバムも、彼の希望でシドニーのスタジオで最終の仕上げをします。一緒にいけなかったのが心残りです。
5.
恋路海岸
村下さんと能登路を旅したことがあり、そのとき恋路海岸という駅を見つけました。そのイメージで作った曲です。
歌を作るという目的で見知らぬ地へ旅行するなどという情緒は今やもうなくなってしまったような気がします。
「野菊よ、僕は・・・」に収録。
6.
夢からさめたら
「陽だまり」に収録。自転車議論をした想い出があります。
最近また自転車の需要があるようですが、僕らの年齢では自転車は恋愛においても重要なアイテムだったんです。
しかし悲しい歌だなあ。
7.
だめですか?
だめという言葉は村下さんの詩の中では、結構キーワードなんです。
この曲が収録されている「愛されるために」のころは、レコーディング自体もコンピューターでの打ち込みが主体になっていて、日本的なメロディーと機械的なリズムの実験がうまくいった曲です。
8.
北斗七星
七夕からイメージされた曲は何曲かあって、村下さんはこの曲がとても気に入ってたようです。
「花ざかり」に収録されていました。このアルバムは「初恋」のあとのアルバムで、彼の中では特に一枚としての内容の充実感では優れたアルバムでした。
彼の作品群の中で、前半の傑作です。
9.
駄目な男
「新日本紀行」に収録。
実は僕は一度だけステージで彼が泣いてしまって歌えなくなったのを目撃したことがあって、そのときに歌ったのが、この曲でした。
10.
二人の午後
村下さんの曲は若い男女の悲恋を歌ったものが多いんですが、この曲の持ってるドラマ性みたいなものだけでも彼の歌がどれほど力があったかがわかります。
まるで映画を見てるようです。同じ主人公の恋物語が何曲もあります。
どうしようもない理由で終わってしまう恋を彼は歌いました。その二人の関係を歌うのではなく、二人がいる空間を描き出すのが好きでした。
「かざぐるま」に収録。
11.
あなた踊りませんか(アルバム初収録)
唯一村下さんの編曲で、彼がほとんど演奏している曲です。柳葉敏郎さんに書いた曲。
彼の持っている中でも特に高価なガットギターで録音しました。アルバムにはもちろん初収録になります。
12.
この国に生まれてよかった
めいっぱい日本人らしい曲を作りましょうといって出来た曲です。
山口百恵さんの「いい日旅立ち」が好きで、そんな感じのものを村下孝蔵流にしたつもりです。
年を重ねるたびに味が出てきて、コンサートでも最近よく歌ってました。「名もない星」に収録。
13.
16才(アルバム初収録)
「少女」の続編です。少年たちの不可解な行動を目にして、大人の大きな愛が必要だということを歌にしました。
子供たちは大人に愛されているということを知らないんじゃないかって話して、作りました。
アレンジは安全地帯の武澤豊サンに頼みました。アルバム初収録。
14.
素直(アルバム初収録)
これも村下さんがやりたい放題コーラスもギターもやった曲です。
彼はとてつもないギターの名手でしたが、レコーディングではあまり弾いてません。
歌に集中したいということだったんでしょうか。ほとんどのアレンジをしてくれている水谷公生さんも、彼のギターには舌を巻いてました。
シングル「同窓會」のカップリング。
15.
同窓会(アルバムヴァージョン/新録)
シングルとしては最後の曲になってしまいました。
ここではアレンジを水谷さんに頼んで、新しいバージョンで収録しました。
このシングルをもとに、もう一度仲間を集めようということで始めたアルバムでした。
16.
引き算
悲しいことですが、スタジオで彼が最後に歌を入れた曲になってしまいました。
はかなきは生きること、というフレーズが心に突き刺さります。
17.
初恋(アルバムヴァージョン)
十六年前の名曲はこれから先も永遠に人の心に郷愁と感動を運ぶと信じています。
村下さんの代表曲はやっぱりこの曲です。アルバムの最後はこれで締めくくりたいと、告別式で彼に頭を下げて頼みました。