2006.04.24[14:38] 引っ越ししました スタッフ
日頃から「続・あんた最高だ!」ご覧頂きまことにありがとうございます。
4月よりこの日記のリニューアルをしましてブログ形式になりました。
アドレスは以下の通りですので、ブックマークをされている方はお手数ですが変更をお願いします。
http://blog.sonymusic.co.jp/sakurai/

ご報告が遅くなり御不便をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

2006.03.31[20:45] いよいよ明日ですね 長嶋有
 いよいよ明日は野音ですね。僕もいきます。
 あ、会場で見かけた方は、気軽に声をおかけください。

 野音はいいなあ。野音は外タレのイメージがない。大体、日本のミュージシャンのフィールドという気がする。邦楽ばっか聞いてた者にとっては、野外であるということとは別に、少しの意味がある。少しでも、意味は意味です。ジーンとしてしまいそうだ。


 私事ですが「小説すばる」という雑誌に短編小説を載せます。
 発売は4月17日で、真心のニューアルバム「FINE」発売の二日前です。

 それで、まあささやかな遊びというか、余興を用意しました。小説すばるの担当編集さんにもナイショで、この短編小説の文中に、真心ブラザーズの曲名を35個、織り込んだのです。

 その35曲はどれでしょう。というクイズを今度やりたいです。
 抽選で数名に、僕がこれから直接会ってせしめてくる真心直筆サイン入りのグッズを差し上げます(一応、希望する人には、僕のグッズもつけます)。
 詳細はまたここで。

 俳句に「花冷え」という季語があるけど、東京はまさにそんな寒さです。風邪をぶりかえさないようお気をつけください。すごいライブを期待してます!

2006.03.19[00:46] 全工程完了 桜井秀俊
 米国産牛肉、原産国で喰ってまいりました。
 ロサンゼルスという街は、確かにレッチリとかを生みそうなテンションの街でした。ステーキ肉は厚底サンダル(時代は遠くなりにけり)のソウル並み、ホテルの有料エロビデオのメニューの3分の1はホモものでした。
 往きの飛行機で風邪ひいちゃって、実は業務においてはほとんど役に立たず、ただいるだけの人であった小生。しかしながら無事、アルバムは完成し、安堵と感慨をもって帰国の途についたのであります。
ただいただけであったとはいえ、出来た瞬間から自慢したくなるのが人情。当該新譜がいかに歴史的名盤であるかを語り倒したくなってはいるものの、聴いてもいない人に千の言葉を並べても、それは今週の「ごっつええ感じ」がいかに面白かったかを週明け学校にて観ていない友達に説明するがごとき愚。ここはぐっとこらえて、牛脂のしみわたった胃腸をお粥で薄め、残った風邪と時差ボケを追い出すべくとっとと布団に撤退することにいたします。
 もしあのとき、いらん勇気をだしてホモビデオを観ていたなら、今夜はきっとうなされていたことでしょう。よかった。踏みとどまって。
 こんな瞬間に大人になった自分を実感したりしつつ、おやすみなさい。

2006.03.13[22:11] Sweet Calories 桜井秀俊
玉男・蓑助の徳兵衛・お初。とりもなおさずそれは平成のボニー&クライド。玉男さん体調不良により観られなかったのは残念でした。90超えてあのリビドー丸出しの芝居。観たかったぜ。
 しかし、玉男さんの魂をイメージし、秀俊37才、タフなレコーディング作業も丸出しリビドーをもって臨んだ次第。
 有さん。ひょんなことから実現した、欽ちゃんバンド状態の「ヘルター・スケルター」セッション。大変楽しゅうございました。初めて人前で演奏したときに僕を貫いた雷を思い出させてくれてありがとう。たった5時間の練習だけであの安定感。ふてぶてしくさえありました。有さん、あなたは頼れるベース弾きになると思いますよ。お陰様で、ありえないほどピュアな17年目、そんなレコーディングが実現いたしました。
 こもりにこもったアルバム制作という名の戦いも、ようやくゴールが見えてまいりました。残すはマスタリングといわれる仕上げ作業のみ。ほとんど汗をかかず、ハイカロリーな出前そしてスィーツを摂取し続けた一月半。
 こうなることは明らかでしたが、なまった。太った。衰えた。隠しきれない中年の肉体。
 本日、久々に海に行き、波乗りなんぞをかまそうかとビーチに車で颯爽と乗りつけたつもりが、駐車場のおじさんに開口一番、
「久しぶりだねえ、太った?」
 言われてしまいました。あんたタモさんか。
 筋肉は完全に退化しており、後半はほぼ漂流してるだけの人。体が膨張したのでなかなか脱げないウエットスーツ。身悶えしながら脱皮する虫のような俺。完全にふぬけた状態で、現在これを書いております。
 そして明日、僕は旅立ちます。
 なんとアメリカ西海岸はロサンゼルスへ。
 マスタリング作業をロスにて敢行することになったのです。どこにそんな予算が。考えるな。気づかれるまえに行ってしまうべし。
 かねがねレコーディングエンジニア(録音技師。要するにオーディオおたく)のツトムさんがプッシュしまくっていたLA。俺にプッシュしてどうなるものでもないというのに、冷やを呑りながらとうとうと意味不明のうんちくを語る夜を幾度となく重ねたツトムさん。そこまで言われたら、魂注入してきた録音物がどんだけイイ音に化けるのか耳にしたくなるっつーのが人情。今回もちろん彼も同行します。しかも数々の歴史的名バンドを輩出した街ってえやつをこの眼で確かめるっつーのはこれ、けっこうな意義のある旅なんじゃないの?しかも足と宿のお代は会社もち。よっしゃ。
 かくして秀俊、人生初のアメリカ大陸上陸。
 初めてでドキドキ、なのはいい。
 しかしながら食生活。私の聞いているところでは、アメリカ合衆国とは世界No.1の肥満大国であると。朝から大ジョッキの生ビールでサンダルみたいなステーキ喰うんでしょ?昼は巨大なハンバーガーを2リットルぐらいのコーラで油まみれのポテトと一緒に流しこむんでしょ?夜はまた生と肉なんでしょ?しかも、「おいしい」っていうのは「量が多い」って意味なんでしょ?
 郷に入れば郷に従うのは日本人として当然の所作。それは受けて立ちますとも。受けて立ちますがカロリーが…。日本の出前の比でないハイカロリーを3度3度摂取して、日々の活動内容はこれまた一滴の汗もかかずにすむこもり系オンリー。
 肥満のみならず、いろんな数値をおかしくして帰国しそうな予感。
 いや、それがなんぼのもんだというのでしょう。いろんな数値と引き換えに、俺はこれからこのレコードを歴史的名盤に仕上げる作業に向かうのです。手に入れる歓喜が大きいのなら、代償もそれなりに覚悟せねば。
 日本じゃ輸入禁止の牛肉を、わざわざ出向いて喰ってくるぜ。

2006.03.07[16:20] 頭韻を踏む春 長嶋有

二月の文楽、「曽根崎心中」を高熱出して見逃した! 人間国宝も出演したっていうのに!
見逃したことより、みたくてたまらなかった人がいただろうに空席を作ってしまったことが悔やまれてなりません。

見逃したものの醍醐味については、桜井さんがここで書いてくれるだろーと思っていたんですが、久々の更新をみたら……

乳間ネックレスですかい!

いや、いいですよ。乳間ネックレス。その語感の良さは、Nyuukan-Necklessの、N音で頭韻をふんでいることにも起因していますね(スキマスイッチはS音。無罪モラトリアムだったらM音)。

でも、真心の新曲の題名が「乳間ネックレス」だったらどうなんだろう。まあ、僕は買いますけどね。

実は、真心の新曲「情熱と衝動」という題名も、「ou」の音が繰り返されてる。カップリングは久々の桜井さんボーカル。かっとんでますね!


ところで、読者諸兄はご存知ないことですが、とある内輪の会の余興でバンドをやることになり、生まれて初めてベースギターを弾きました。

そんで、生まれて初めて「スタジオ」に入って練習しました。桜井さんがギターを弾きました。って、子供の作文みたいになってしまうのも仕方ない。スタジオのロビーにギターを背負った桜井さんが現れたときの気持ちは、筆舌に尽くしがたいとはこのことだ。大学生のころから聴いていたバンドの人と一緒に演奏するんだから。

スタジオで練習して、その一時間後には本番……ってありえないですね。余興とはいえ、会場で「ベースというものに触ったのは五時間前です」といったらドヨメキましたな。

演奏は……温かい目でみてもらえてよかったです。今回は借り物だったけど、近々ベースを買いますよ。音楽のゴッドに失礼のないよう、もうちょっと、練習します。

2006.02.28[01:48] みなさん、春です 桜井秀俊
「桜井さん、“にゅうかんネックレス”って知っていますか?」
 ご注進!といった面持ちで報告してきたのは、先日新妻になったばかりの真心ブラザーズ女子マネージャーこと旧姓W。俺の心の琴線などとうに掌握済みであり、かつ、給料の大半を洋服と化粧品につぎ込むお洒落大好き人間の旧姓Wのこと、
「それはもちろん“入国管理局”の略などでなく、“乳の間”これを略しての“乳間ネックレス”ってこと?」
 と俺。かっと見開いた瞳を決してそらすことなくこくりと頷く旧姓W。

 乳間ネックレス

 漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット小文字に大文字。これらの様々な組み合わせをもって各種ネーミングを施すはこれ、表現にかかわる人間にとっては細部なれども大事な決定事項。
 「スキマスイッチ」は「隙間Switch」では断じてカンジが出ないのであり、「スガシカオ」さんは「管鹿男」では成立しえないのです。「Yo−King」が「よ〜きんぐ」ではロックの抜けきったその辺の愉快なおっさんになってしまうのです。言語としての正・不正はまあ置いておいて、表記方法の組み合わせがもたらす力の存在は誰も否定できないところ。
 記号をはさむっつーのももはやこの国に定着した感があります。「つのだ☆ひろ」さんに「涙が☆キラリ」(合ってる?)、「つんく♂」さんっつーのも味わい深い。
 数多いパターンの中でも王道はやはり“漢字+カタカナ”パターン。ハーフの人の名前のようなボーダレス感がたまらないゆえと僕は認識しているのですが、その点、いかが。人やグループの名前のみならず「無罪モラトリアム」「音速パンチ」等々、各種タイトルでいかんなくそのパワーを発揮している“漢字+カタカナ”パターン。
 しかしながら、しかしながら並み居る強豪を抑えに抑えて「乳間ネックレス」。いやー、秀俊久々に魂をパカーンと殴られた気分であります。
 旧姓Wにはかねがね私、昨今の若い女性の胸元の開いた服のはやりつつあるこの波について、いかに俺が大歓迎であるかを口角泡を飛ばして語っていたところ。そんな矢先に訪れたその波に輪をかける乳間ネックレスという新たなるうねり。これはとんだ併せて一本ビッグウェーブな予感。生きる力が湧き上がるのを実感します。
 男なら誰だって冒険したくなる母なるチチ渓谷。それだけでも旅に出る理由として十分なのに、その白く柔らかな渓谷には最近、光輝く財宝がはさまっているという。友よ、出かけよう。そしてその名前がまたふるっているのさ。

 乳間ネックレス

 わざわざ前後に一行開けたくなる響きだぜ、乳間ネックレス。ロマンチシズムとエロチシズムをここまで完璧に、しかも同時に満足させてくれたら、「音速パンチ」といえども今回の戦いに関しては勝ちを譲らざるを得ないのではないでしょうか。同じ土俵に上げるのはいかがなものかと、それは決して言わないで。

 この波の到来を俺は心底願う。
 春は、近い。

2006.02.15[00:57] ビター&スイート 桜井秀俊
 ずっとこの日が嫌でした。
 嫌というより、おっくうという方が正確でしょうか。前の晩から「あー、嫌だなー。」と思いながら布団をかぶり、当日は寝起きからブルー。そんな年月を重ねて早や二十余年。
 365日24時間「モテてーなー」と考えながら生きているツケがチョコなる小さなお菓子に凝縮されて突きつけられる一日。それが2・14。
 もらえるもらえないが問題のコアではないのです。
「もしかしてもらえたりして」という気持ちで過ごす我が心の身の程知らずさよ。もらえなかったらそれなりにショックな身の丈の見えてなさよ。もらえたら小躍りしたくなる程にうれしくなってしまう小ささよ。そんな気持ちを思わずかくそうとしてしまう底の浅さよ。己の薄っぺらさをいやがおうにも確認させられる、それこそが2.14問題のコアなのであります。
 ああ、自分なんてみつめたくないぜ。なのに何故、やってくるのかセイント・ヴァレンタイン。ドキドキなんて、がっかりなんてたくさんなのさ。本当は、がっかりはしたくないけどドキドキはしたいのさ。
 大人になるにつれて少しずつどうでも良くなってきはしましたがBaby、それはいいことだろう?いいことなのか!?
 大人になった今回は、地下のスタジオにて録音作業の真っ只中。さきほど、偶然居合わせたサンボマスターの面々と談笑。楽しかったけど、2・14男5人…そーゆーんじゃなくって。もっとこう、木村カエラちゃんとか。ああいかん、作業とチョコに追われて夢が暴走しかけておる。
 今日という闘いが終わって帰宅した今、メールをチェックしたら、着信1件を確認。ドラムのビバさんでした。明日は何時集合か、とのことです。
 僕は今年も確かになにかを期待しながらメールを開き、確かに軽くがっかりしながら返事を打ったのです。あまり大人になっていなかった俺。それはいいことだろう?
 ビバさん、明日は13時に集合です。よろしくお願いします。

2006.01.30[07:21] お久しぶりです! 長嶋有
桜井さん、お疲れ様です!
そして、お久しぶりです。
昨年末の中野サンプラザの興奮を、速報で書き込もうと思ってたのに。
気付けばもう一月が終わりだよっとくらぁ。はぁーあ。

うっかり(?)週刊連載一つと月刊連載を二つもったら、修羅場が毎週です。いや、仕事があるだけありがたいです。誰につぶやいてるんだ俺。


鉄道マニアの件、まったく同感です。
あらゆる「マニア」の中でも、鉄道マニアが一番「深い」と、僕は思う。尊敬すらしてる。
だって、「現物が手に入らない」んだもん!


ヤフオクで○○(←各自適当なオタクな品名をいれる)が、いかに入手しづらかったか、とか語る人をみると、「でも入手できてるじゃん!「って思う。


本、切手、絵画、たいていのものは「手に」入る。
音楽マニアの場合、もちろんライブは一期一会だけども、CDやレコードもある。
アニメマニアは、アニメの中のキャラクターそのものは虚構だけども、でもセル画は「現物」だし、DVDの箱買いもある。

電車はなあ。容積からいって、現物はほぼ無理だ。それで彼らは「乗ったり」、時刻表をたどったり、写真におさめたりする。そのすべてが代用行為(模型もあるけどさ)。

頭の中に好きなものがあって、現物に寄り添うことで脳を満たす。深すぎる。
そういう逸脱した感情移入は、なんだかロックに似てるとすら思う。


飛行機マニアも、まあ同じこといえるけど、エアライングッズはデザイン的にコジャレてるからなー。いや、コジャレてて悪いわけじゃないのだが。


あ、昨年はくるりもアジカンも電車の歌を歌ってたよ。
赤いの(京急)と青いの(ブルトレ)歌ってた。
黄色いの(総武線?)がまだあいてますよ。意味もなくすすめてみた。

なんか久々に書いたら芸風変わった気がするけど、今年もよろしく!
二月は文楽ですね。

2006.01.29[00:34] 全身規制緩和中 桜井秀俊
 男たちとの山ごもりは日々是命のやりとりでありました。命からがら下山。お陰様で守備範囲を広げるどこではございませんでした。録画しておいためちゃイケ!観てしばしぼぉーっとしよ。
 しかし。
 太った。出てきた。お腹が。ぽっこりと。
 たった一週間、ほとんど運動らしいことをせずに、仕出しのご飯は躊躇なくおかわりし、夜は極度の緊張からの開放によりビールをたっぷり頂いただけで。十分ですか。
 いやーこりゃ気を引き締めて飲み食い控えてかないと、まだ当分録音作業(一日中動かず無意識に口になにかしら放り込み続ける作業)は続くんだから。まずいよ秀俊。
 と、ビールをいただきながら言っておるのですが。
 サッポロビールさまに大量に頂いたお歳暮が、俺のブレーキを亡きものとして、ああ、カロリーが、プリン体が…。ご馳走様です。
 私の好きなとあるイタリア料理屋さんのキャッチフレーズは「ダイエットは明日から!」。特にダイエット中というわけでもないのに、毎度毎度このコピーを目に入れた瞬間、心のタガが決壊しパスタでん肉でん魚でんワインとともに際限なく胃袋に放り込んでしまう俺。
 今は、せめて今は、めちゃイケ!とビールを…。

2006.01.22[09:45] 青春のストライク 桜井秀俊
 昨日一日東京近郊に降り積もった雪は、あの大きな富士山のことも真っ白に染めたのでしょうか。

 もう十余年も前のことですが、一人でバリ島に旅行したことがあります。確か、4泊ぐらいだったか。
 一人で、といっても最初からそんな深夜特急気分だったわけではなく。当初は恋人(当時)と二人でしっぽり盛り上がるつもりであったところ、急に先方に抜き差しならない用事ができたとかでどーしても行けなくなってしまったと。とはいえすでにキャンセルしても料金は戻ってこないほどに日は迫っており、テーブルに出された湯気の立つカツ丼二人前に手を付けぬまま店を出られるほど大人でなかった僕は、二人前を全部食うべく迷うことなく箸をとった、すなわち単身成田へ向かったのであります。
 バリ。それは神々の島。王様気分のホテルの部屋。「天国と地獄」を髣髴させるエキサイティングな夜の街。海。空。太陽…。
「こ、これをオレがひとり占め…!」
 呑気に感動できたのは最初の24時間が限度でした。それ以降は富はあれども友は持たぬ孤独な裸の王様状態。分かち合ってこその贅沢。ああ、本来なら特別な人とだけ分かち合いたいところだけど、特別な人どころか俺は…ひとりぼっちじゃあないか。だ、だ、誰かぁ。
 三日目に気づきました。プールサイドを歩く女性という女性がことごとくまぶしく見えてしまっている俺のことを。かつてないほど広がった守備範囲を。捕れないボールがあるものか、構えたミットが受け止めるであろうことを。
 自分が恐ろしくなって、部屋にひっこんでシンハー呑みながらNHKニュースとか観てたっけ。
 バリ、それは地獄の楽園でした。
 帰ったらたっぷり愛してやるぜ!と思いを募らせていた先方は、帰ってみれば極めて不機嫌な状態にありました。曰く、
「もー、ひとりで行くなんて信じらんない!」と。
 球場全体に及ばんばかりの守備範囲を誇る俺に捕れないボールなどなく、しかもどんなボールでも捕りたかった俺は、にもかかわらず確かに一球たりとも手を出さずに凱旋しはしました。しかしながら矢吹戦のために一滴の水も口にしなかった力石徹についてどんなに力説しようとも、オレの矢吹は君なのだとどんなに訴えようとも、時はもう遅すぎたのです。二膳のカツ丼に箸を付けてしまった俺の若さが、すでに決定的な敗因だったのでしょう。二人の愛は流れた(サボテンの花/チューリップ)。遠い日の苦い一ページです。

 この雪は富士山のふもとにも降り積もり、周囲の路面を凍結させ、付近の住民のみなさんを閉じ込めたりするのでしょうか。
 週明けから富士山のふもとにあるレコーディングスタジオに一週間ほどこもる我々のことも。
 今回は物見遊山でなくもちろん創作活動。しかしながらあれから十余年、俺は通常の守備範囲を維持できるほどに大人になったのだろうか。プールサイドも海もなく、待っているのは氷の世界と男たちとの録音の日々。逆に想像力が膨らみ過ぎそうで少々おっかなく…。
 試される一週間はもう目の前に。経過は、追って。

2006.01.11[12:00] ラブ・トレイン 桜井秀俊
 初めてそれを体験したのはたしか一昨年。単独で敢行した大阪への文楽旅行、題して「ひとりミシシッピ」での移動中。御堂筋線だったか堺筋線だったか。とにかく地下鉄でした。
 ドアにもたれてぼーっと突っ立ちつつ大阪風味の吊り広告(関西ローカルとおぼしき全く知らないタレントさんの全開の笑顔、等々)をしみじみ味わいながら目を泳がせていたところ、向かいの窓に貼られたステッカーの文字が目にとまったのです。
 “女性専用車両”
 全く馴染みのないシステムにとりあえず面食らい、もう一度よく読めば、確かにここは“女性専用”に指定されているよう。思わず周りを見渡せば、なるほど男は俺一人。
 目ぇひんむいて毛ぇ逆立て狼狽しつつ、心で「すんませーん!全っ然知らなくってー!つーか大阪、こんなシステムあるんすかー!?」と叫びつつ、そそくさと隣車両へ移動。やー、胆を冷やしました。
 安全な普通車両で我を取り戻し思ったのは、大阪なら一人くらい「関係あるかボケぇぇえ!」的豪快おとっつぁんが大股開いてぐーぐー寝ててもよさそうなものを、みなさんきちんとルールを守ってきれーに女性オンリーだったこと。なんか、文化的先進エリアってカンジでした。どぎついのに洗練にこだわるアンビバレント、なんつって、さすがにそれは考えすぎですか。
 東京近郊の私鉄でも最近ちらほら導入されつつある“女性専用車両”システム。まだ時間帯限定とかで、全面導入ってわけではないようですな。例えば小田急線。
 〜平日・新宿に7:30から9:30に到着する上り快速急行・急行の最後尾車両。実施区間は小田原→新宿および藤沢→新宿〜
 だそうな。一生懸命読んでやっと理解して「セーフ」と一息。ややこしいよ!
 とはいえ読み取れる趣旨は、まあ第一に痴漢対策でしょうな。浮かぶイメージは、
「ああ、今日からは安心だわ!」
 とばかりに朝の光に包まれてOLさんが、女子大生さんが、女子高生さんが、きゃっきゃきゃっきゃぎゅうぎゅう詰めの夢のような東京トレイン。このまま俺をどっかへ連れてってくれ。俺は乗ってないですか。
 しかしながら実際は、きゃっきゃきゃっきゃ8割おばちゃんっだったりね。あと、あなた本当に人生の中で一度でも痴漢にあったことが…いや。やめましょう。くだらん勘ぐりは。でもしかし…気になる。吊り皮越しに横目で人知れず「お前が乗るんかーい!」と上からツッこむ美しいあなたの隠された心の刃物が…うーん、俺ってつくづくM。それはいいとして。
 ずいぶん前から思っていたけど、痴漢に辟易している女子って、ほんっとに多いよね。飲み会では主にそんなことを聞き出す傾向にある俺も俺だけど、そんなにみんな被害にあってんのかと。世の中に痴漢ってえのはそんなにもいっぱいいるもんなのかと。驚かされて幾年月。
 お陰様で満員電車に乗れば必ず“かばんを胸に抱く”等の「俺、シロです」サインを出してしまう小さな俺。女子のお尻に偶然手がくっついてしまう事態に陥った際、「手の甲は無罪、手のひらは有罪」なる全くアテにならない飲み会トーク情報に惑わされ、何とか「ひら」を「甲」にひっくり返そうとがんばって余計に犯罪者に近づいてしまった俺。それもこれもファッキン痴漢野郎が多すぎるからだ!
 そんなにいっぱいいるんだったら、俺の知人にもひとりぐらいはいるんだろうか。そうだとしたらディア・マイ・フレンド、やめときな。やばい橋を渡るにも、その橋はいくらなんでもしょぼすぎる。
 ひとつ気になるのは、鉄道各社おおむねはじっこの車両を女性専用に指定していること。最前、もしくは最後尾の車窓からの眺めっつーのはこれ、素人目にもオツなもの。まして鉄道マニアのみなさんにとってはかけがえのない景色。って、前に「タモリ倶楽部」でやってたような。そして、鉄道マニアと呼ばれるみなさんは概して、女性専用車両ユーザーから最も誤解を受けそうな部類の風貌の青少年である場合が多く…。
 鉄道各社エグゼクティブの諸兄方、お願いがございます。どうか、はじっこは勘弁してやってくれないでしょうか。彼らは貴社のお客様に危害を加えるような人種であるどころか、貴社の母体たる鉄道にロマンを見出し心酔する魂優しき者たちなのです。どうか、彼らの心のオアシス、“はじっこからの眺め”を奪わないでほしいのです。
 長々と書きましたが、言いたかったのは、これです。
 最後に業界を支えるのは、マニアでしょ。

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