取材・文/藤井美保
デビュー5周年おめでとうございます。2014年の結成10周年とはまた違う感慨がありますか?
NANAE
そうですね。未開拓のことにいろいろ挑戦できるようになったのは、デビューしてからだったなとあらためて思います。
MAIKO
『アニップス』というアルバムができるくらいテーマソングもやらせていただいてるし、それがまた海外にまで伝わって。
KEITA
そうだね。海外でのライブを経験できたことは、めちゃくちゃ大きいです。
MICHIRU
デビュー前には想像もできなかったですね。
KEITA
なんか思い出すなぁ。
アマチュア時代に、仙台で行われた一般参加枠のあるジャズ・フェスに出たことがあって、せっかくだからと、翌日ライブハウスのブッキングもしといたんです。
ところが、行ってみたら、3バンドのうち2つがそこのスタッフのバンドで、お客さんはガッラガラ。
「もう二度とここではやらん!」と。
デビュー2年後くらいかな、そのタイミングで仙台でやったときは、お客さんが来てくれて、同じ場所ではなかったけど、「ああリベンジできた」と思いました。
MAIKO
デビューしてから、集客をはじめ、いろんなことがアマチュア時代とはあからさまに変わっていきました。
デビュー=プロとしてのスタートですよね。
意識の変化もいろいろとあったと思います。
せっかくなので、『アニップス』の収録曲を時系列でたどっていきましょう。
まず『NARUTO-ナルト-疾風伝』のOPテーマだった「ラヴァーズ」。
今聴くと、「若っ! 速っ!」って思います(笑)。
NANAE
歌い出しの部分なんて、何言ってるかわからないくらいですよね(笑)。
アニメのテーマソングはこれが初だったので、決まったと聞いたときは本当に興奮しました。
曲制作のことで思い出すのは、KEITAの家に集まって、夜中まで試行錯誤をしたこと。
MAIKO
そうそう。メロディを5パターンくらい考えたよね。
KEITA
うん。「夏の空見上げてサケんだ」のところね。
MICHIRU
思い出深いですね。
MAIKO
「歌詞書いてみたーい」と言ったけど、いざ書き始めたら大変だったという思い出があります。
メジャー・デビューして初の書き下ろしだったし、タイアップゆえの制約とかも多くて。
ただ好きなように作るのではなく、誰かと意見をぶつけ合いながらカタチにしていくというのは、メジャーならではだなと思いました。
『NARUTO』の世界観は大事にするけど、そこに寄せすぎると7!!のカラーが薄まってしまうと思い、そのバランスにすごく苦労しましたね。
「もうわかんなーい!」って泣きそうになってました(笑)。
NANAE
そのMAIKOの姿、覚えてる。ダメ出しがフワッとしすぎてて。
MAIKO
そう。何がダメなのかわからないという感じでした。
MICHIRU
書き下ろしてからTVで流れるまで時間がなくて、ものすごい短期間でレコーディングだったんです。
デビュー2作目でプロとしての洗礼を受けたという感じでした。
KEITA
それまで1年間くらいは、沖縄でゆっくりのびのびとやらせてもらってたから、ギャップについていくのに必死で。
MICHIRU
アレンジが上がったのがレコーディング前日。
練習もままならなかったから、ホント、ドキドキでした。
でも、『NARUTO』をきっかけに、知ってくれる人がグンと増えましたよね。
MAIKO
沖縄でも放送されていたので、親とか友達に、やっと胸を張って活動の場を見せることができたし、ブログのコメント数とかもスゴく増えました。
KEITA
当時俺はまだガラケーで、レコチョクをよく使ってたんですけど、そのトップ画面のランキングが、1位が「マルマルモリモリ」、2位がたしかKARAで、3位が「ラヴァーズ」。
ビックリしたのを覚えてます。
MAIKO
ランク付けされるのもメジャーならでは。ミッチーはめっちゃ見るよね。
MICHIRU
暇さえあれば見ますね。
MVのYouTube再生回数とかも、伸びると「よしよし」ってなります(笑)。
やっぱり世の中に出すからには、反応してほしいし。
それもまたプロ意識。
同じく『NARUTO』のOPテーマだった「さよならメモリー」では、ド頭のNANAEちゃんの「瞳閉じて」の声が別人みたいで衝撃的でした。
MAIKO
なんかゴッツイんですよね。「♪ヒトミ」の「ト」にすっごい力が入ってる(笑)。
KEITA
マジか。俺、全然気づいてなかった。
ちょっと今、聴いてみていいですか?
(ケータイで鳴らしつつ)ホントだ(笑)。
MAIKO
「♪ヒトミ」(何度も真似する)。
一同
(大爆笑)。
パンチがあるんですよ。
NANAE
気合入ったんですかね(笑)。
MAIKO
歌の引き出し増えたんじゃね?
NANAE
はい。ノー戦略で1ランク上の自分が出ました(笑)。
MICHIRU
惹きつけられるからいいと思う。
NANAE
ありがとうございます。
これからもこの曲歌うときは、力強くいきたいと思います(笑)。
演奏面で進化が見られたのは、どのあたりからでしょう?
KEITA
「ReReハロ~終われそうにない夏~」からアレンジがガラッと変わりました。
それまでバンド・アレンジだったのが、ピアノやストリングスが重要な位置を占めるようになったんです。
最初は違和感があったけど、今思うと、これで次のステップに進めたんだなと思います。
レコーディングでもライブでも、それまで以上の表現力が必要になって、むちゃくちゃ苦労しましたけどね。
あと、漫画とのコラボという初の試みだったし。
MAIKO
そうそう。
『ReReハロ』の連載が始まる前に持ち上がった企画だったから、唯一できていた一話だけを読んでインスピレーションを広げたんです。
NANAE
MVもコラボした内容でしたね。
MAIKO
制服着た!
KEITAが全然似合ってなくて笑ったよね。
ひとりだけ「オッサンいる?!」みたいな(笑)。
「スタートライン」は『金田一少年の事件簿R』のEDテーマ。
結成10周年の記念ソング的な曲でもありました。
NANAEちゃんの声の優しさに癒されます。
NANAE
ありがとうございます。
結成10周年の思いが詰まった曲。
自分たちの成長を表現したかったんだと思います。
これは詞、曲ともMICHIRUクンでした。どんな思いをこめましたか?
MICHIRU
デビューしてから、楽しさと同時にプロとしてやっていくことの難しさを痛感したんです。
右を向いても左を向いても才能のある人たちばかり。
そんななか、わざわざ僕たちを選んで来てくれるお客さんがいる。
そのありがたさを忘れずに、常に最高のライブをやらなきゃと思ったのが、この曲を作るきっかけでした。
このメンバーでずっとやっていきたいという思いもこめてます。
KEITA
この曲の入ったアルバム『STARTLINE』では、1stアルバムと比べものにならないほどアレンジの幅が広がりました。
なかでも、壮大で苦労が多かったのが「スタートライン」。
でも、確実に次につながる曲だと思いました。
まだまだいろんな可能性があるなと思えたんです。
そのタイミングで、渋谷公会堂でのライブがありました。
それを前にして、MAIKOちゃんが「ステージに上がるのコワい」って言ってましたよね。
その頃の自分を振り返って、今、どんなことを思いますか?
MAIKO
(メンバーに向かって)今日は泣かないよ。
今思うと・・・あのときは自信がなくなっちゃってたんですよね。
MAIKOはここにいるべき人間じゃないんじゃないかって悩んでしまって。
KEITA
お、泣くぞー。
MAIKO
ああ、思い出すとダメ(苦笑)。
NANAE
ほら、ティッシュ、ティッシュ。
今でも感情があふれるほど、大きな転換点だったんでしょうね。
メンバーはどう対応してたんですか?
KEITA
MAIKOが何か泣き言を言い出しても、「そっか。悩みすぎじゃね?」と(笑)。
MICHIRU
MAIKOは自分の不安をみんなに伝染させたがるんですよ(笑)。
KEITA
そう。こっちは不安があっても、とにかく練習で自信をつけるんだと思ってるのに、引っ張りたがる。
MAIKO
ホント、みんなは弱音を吐かないからスゴいと思うんです。
MAIKOはひとりで抱えられない。
なんとか抱えたとしても、それを支える確実なものがないから、ふとした人の冗談とかで泣いちゃうんです。
KEITA
会話のなかで、いつものように冗談で「おまえブスだな」って言ったとたん。
MAIKO
ブワーッと(笑)。
MICHIRU
このままMAIKOのカウンセリングに突入しそうだから、話、戻そう(笑)。
そうですね(笑)。
では、「アオイハナビラ」にいきましょう。
これは映画『アオハライド』のコンピレーション・アルバム『アオハライド“MUSIC RIDE”』に収録されたものでした。
とっても爽快な曲。
NANAE
『アオハライド』を試写会で観たあと、ミッチーが、8割がたできていた曲の歌詞を最終調整しました。
MAIKO
ミッチーさん、この頃になると、映画に寄せるのも慣れっこですか?
MICHIRU
成長しました(笑)。
ま、単純に、場面の浮かぶ歌詞にしたかったんです。
MAIKOちゃんのリムショットがすごくカッコいいです。
MAIKO
ありがとうございます。
最近リムをカンカンするのが好きですね。
この曲は、バンド・アレンジでもアコースティックでも、演奏するのが気持ちいい。
KEITA
そうだね。
めっちゃアップテンポってわけではない心地よさがある。
MAIKO
今年になってコイツのよさに気づきました(笑)。
NANAE
本当に爽やか。
MAIKO
沖縄でバイク乗りながら、これを口ずさんでることが多いかも。
「アオイハナビラ」と同時期のレコーディングだったのが「オレンジ」。
本格的なバラードに取り組み、成長著しかったのでは?
MICHIRU
なんといっても、まるまる1コーラス、バンドはお休みというのがね。
MAIKO
斬新でした。
休符も表現力のひとつだということを知って、一気に大人になった気がします。
NANAE
ライブで演奏する時、「オレンジ」を待っててくれたというのが、お客さんの表情から伝わるようにもなりました。
それがうれしくて。
NANAEちゃんは、「四月は君の嘘」のクラシック・コンサートで、この曲をピアノとバイオリンだけで歌ったりもしましたよね。
NANAE
はい。
けっこうな数、やらせていただき、鍛えられました。
バンドのライブと違って、とにかく会場が静かなんですよ。
シーンとしたなかで始まるのが、最初恐怖でした。
しかも、リズムがないから、音の隙間がいっぱいあるように思えて、それもコワいんです。
そこを埋めようとして声を張る自分が、最初の頃はいました。
徐々に、ここはむしろ抑えたほうがグッとくるんじゃないかと考えられるようになって、歌い方が変わっていったと思います。
メンバーも観に行ったりしたんですか?
MAIKO
NANAEが出演した最初の一回だけ行きました。観てるこっちが緊張しました。
NANAE
スゴく孤独だったので、メンバーが来てくれて心強かった。
会場を見渡したら、濃い顔が並んでるんで(笑)。
MICHIRU
顔、わかったの?
NANAE
うん。あの3人の濃い顔に比べたら、NANAEは薄いわ~って。
MAIKO
そんなこと思ってたんだ(笑)。
NANAE
メンバーの顔が見えたら、そういう余裕が出たんです(笑)。
KEITA
ピアノとバイオリンだけだったけど、歌、全然負けてなかった。
「NANAEさん、やるなぁ!僕らも頑張らないと」って思いました。
MAIKO
最近特にNANAEはひとりでやらなきゃいけないことも多いけど、いっさい弱音を吐かないのがエラい。
KEITA
お前とは大違いだ(笑)。
MAIKO
ホント、大違いさ。
ウハハハ。
NANAE
私は言えずに溜めてしまう性格なので、たまにトイレとかでめっちゃMAIKOに泣きついてます。
「もうヤダ~!」って(笑)。
MAIKO
突然くるよね。
バシャバシャバシャって手洗いながら、ふと見ると涙目になってて、「どうした~?」って。
NANAE
自分ひとりで抱え込んでるのがめっちゃイヤになるときがあって、誰もいなくなった瞬間、MAIKOに「ねぇ、聞いて?!」ってなりますね。
MAIKO
MAIKOはそれをうまく受け止められずに、ソワソワしちゃうこともあるけど(笑)。
NANAE
でも、共有してくれることがうれしいんです。
素敵なバンド物語!
MAIKO
NANAEがそうなったときは、ミッチーとKEITAに「あのね、NANAEちゃんも大変なの」と報告します。
ちょっと前もありました。
3人で焼肉屋さんに行ったときに、「こうやって3人だけで食べてることも、NANAEちゃんにはストレス。
だから、ここに来たことは内緒ね」と話したことが。
MICHIRU
あったあった。
「saku saku」の撮影の合間に3人で焼肉屋ランチに行って。
MAIKO
「内緒ね」と話してたにもかかわらず、数日後4人でその店の前通ったとき、「この前この焼肉屋さんで・・・アッ!」とMAIKOが口を滑らせて。
KEITA
「お前、言わない約束だろう!」と言ったらNANAEが。
NANAE
「エッ、3人で来て、そのうえ言わない約束してたんだ」ってなって。
MAIKO
「今度4人で行こうね」ともう必死でなだめました(笑)。
デビューからのいろんな変化をくぐって、バンドの結束力は強まってると思います。
漫画家の羽賀翔一さんが描いた『アニップス』のジャケットはいかがですか?
MICHIRU
CDショップの棚に並んでるのを見たら、スゴくインパクトありました。
MAIKO
「実物より可愛く描いてください」とお願いしたら、その通りで。
NANAE
飼ってる犬を描いてくれたのもうれしかったです。
インナーにはバンドのこれまでがわかるエピソード漫画まで。
KEITA
僕らに軽くインタビューしてくれたのを、うまく漫画にしてくれました。
MAIKO
「仏のNANAE、鬼のMAIKO」っていうのがめっちゃ面白い(笑)。
7!!のキャラを知ってもらえるいいきっかけになると思います。
MICHIRU
キャラの濃さは、僕らのセールスポイントでもあるので。
漫画の衣装は、最新のアーティスト写真と一緒ですね。
NANAE
はい。紅型(びんがた)という沖縄の伝統的な染色技法の柄をあしらった衣装なんです。
MAIKO
NANAEはピンク、MAIKOは黄色、KEITAは青、ミッチーは緑というメンバー・カラーになってます。
MICHIRU
実写の撮影も今回は沖縄ロケ。
KEITA
国内はもちろん、海外に発信するときにも、沖縄出身のバンドっていうことを打ち出したほうが、わかりやすいんじゃないかなと思って。
特に『アニップス』は、海外にいる日本のアニメ好きにはたまらないですもんね。
MAIKO
名刺代わりの1枚になりましたね。
NANAE
向こうでのファンイベントでは、「質問ある人」と言うと、手がバンバン挙がるくらい積極的な人が多いんですよ。
MICHIRU
一生懸命日本語で質問してくれたり、歌詞を英訳して、深く理解しようとしてくれたり。ホント、うれしいです。
仙台のライブハウスでの悔しさから、いまや海外にまで7!!の名前が届いてる。
この5年で育てたものがたくさんあるんですね。
MAIKO
「誰もができることではないと思います。5周年おめでとう」というファンの人からの手紙を見て、「たしかにそうだな。この恵まれた環境は当たり前じゃないんだ。感謝してまた頑張らなきゃ」と思いました。
「初心に帰らせてくれてありがとう」と言いたいです。
ここからの新たな作品も楽しみです。
KEITA
1月、2 月は、新曲作りに集中してました。
MICHIRU
昨年作ってた曲は、もうけっこうライブでは披露してますね。
配信限定シングル「世界を回せ!!」は、沖縄では「オリオンスタイル」のTVCMになってるし、「横顔」というバラード曲は、やはり沖縄で「飲酒運転撲滅キャンペーン」のCMになってます。
MAIKO
飲んだら乗るな、という使われ方ですね(笑)。
KEITA
沖縄在住のバンドだってことを沖縄の人こそが知らなかったりするので、どんどんアピールしていこうと。
NANAE
バラードも増えてますが、新曲にはイケイケチューンもたくさんあります。
MICHIRU
そうだね。原点回帰な感じかも。
原点回帰でも、演奏アプローチは以前より大人っぽくなってるんじゃないですか?
KEITA
レベルアップしたロックっぽさを出していければなと思ってます。
ニュー・アルバムは、夏の終わりくらいには届けたいなと思ってるので、ぜひ楽しみにしててください!