その昔、私はとても哀しがり屋でした。まるで、わざわざ傷つくために何かを探しているような、そんな子供でした。そのくせわんぱくで、男の子よりも元気で乱暴な女の子でもありました。光と影、天と地…。すべてに裏表があるように、誰の心にもいくつかの自分がいるはずです。でも、それが人間にとって自然な性質。ポポロの主人公たちを見れば、よくわかります。とかく優しさが恥ずかしい年頃には、喧嘩はつきものです。特に幼い時代は、友達と散々傷つきあいながら、思いやりや人の痛みを勉強するんですよね。今回この仕事をさせていただいて、久しぶりに少女だった頃を振り返りました。いじめられた事もあったし、その逆も当然ありました。けれどその時の強烈な思い出や反省が、この歌の世界で償われた…そんな気がして、今、幸せいっぱいです。
 それにつけても、ピエトロの馬鹿正直な正義感や、ヒュウの意地っ張りぶりなどは、私たちが生まれつき持っているまっすぐな遺伝子。「俺はガミガミタイプだ」とか、「私はナルシアっぽいかな」と、自己分析しながら楽しめるのもポポロならではです。ですから嬉しかった事、泣きたかった事、そんな当たり前の気持ちを集めて歌にしてみました。皆さんが懐かしんでくれたり笑ってくれたら、こんなに素敵な事はありません。何より、素晴らしい作曲家の方々を始め、スタッフ皆さんのおかげで完成したアルバムです。ポポロへの熱い想いを、どうか一曲残らず聴いて下さい。
 言葉は時に臆病でワガママな存在ですが、メロディという仲間がいると、不思議と誰かに伝えたくなる…。本当は、淋しがり屋の言葉たちのために、音楽があるのかもしれません。

鮎沢すみ絵


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